集義和書より
<原文>
知者は動き、仁者は静かなり、と。
動静は相似ずといへども、
ともに有徳の人なるか。
云。是二人にあらず。
一氣の屈伸、
天の陰陽なるが如し。
一動一静、互いに其根をなせり。
よく動くものはよく静かなり。
知者は 周流して世にとどこほらず。物にまどはず。
故に楽しむ。
流水を見て 嘆息す。
左右其源に逢ふ。
知の象あればなり。
仁者は萬物をもって一体とす。
死生禍福とともに 吾有なり。
ゆえに
生々にして亡びざるものは命ながし。
無欲にして静かなり。
山の象あり。
徳性の
動いて楽しむを知といひ
静かにして壽(いのちなが)しを 仁といふ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
<超訳>
あるひとが聞いた。
知者は動き、仁者は静かである。
それは反しているように見えるが、
どちらも徳がある立派な人と言えるか?
もう一人が、答えて言うには、
知者と仁者は、そういう人たちがいるのではなく、
一人の中に、知者の部分と仁者の部分があるのである。
そのさまは、あたかも、
尺取り虫が、伸び縮みして前へ進むようでもあり、
氣が、散じたり、集まったりするようでもあり、
天に陰陽、日月、昼夜があるかのようでもある。
一動一静と言っても、それは同じ根っこにあるのである。
よく動くものは、よく静かである。
知者は水を楽しみ
仁者は山を楽しむ
というが、
それは、
知者が、いろんなことをうまく流し、立ち回るためである。
知者は、世に滞留を生まない。自分自身もまどいがない。
知者は、
水と自分が似ていると、思いを巡らし
流水を見ては、その源流まで思いを馳せ、
一を聞いて、十を知る、かのように、
先の先まで見通してしまう。
これが知のあらわすところである。
仁者は
萬物をもって一体とする。
全宇宙と一体となっている。
死も生も、
禍も福も
吾が内に有している。
ゆえに
生き生きとして
ほろびることなく
宇宙と同じように
不滅性をもっている。
無欲で、静か。
その姿、
そして心は、
まるで、山のようでもある。
「動いて楽しむを知といひ
静かにして壽(いのちなが)しを 仁といふ。」
Comentários